【古賀はこがんとこばい】「古賀の民話と伝説の地を訪ねて」(その5・前編)

第5回目は、清瀧地区の山奥「本谷」での話。

天狗の笛1

舞台は、淸瀧橋から犬鳴登山道を三十分ほど歩いた砂防ダムのある「本谷」という所にある「三本柞(さんぼんいす)」と呼ばれる谷合い。

昔、緑木深い淸瀧の里に、笛を吹かせれば天下一と言われる程の笛吹き名人が住んでいた。
村祭りの囃子しにも、この人がいないと拍子抜け。

秋も近まり幾分涼しくなったある日、笛吹き名人は、腰に昼食のお握り弁当を結び付けて、険しい山道を本谷へと薪拾いに向かい、谷合いに茂った三本の柞の大木あたりに来て、薪拾いを始めた。

薪も大分拾った頃、ここらで一寸一服と独り言を言いながら柞の木の下に腰を下ろし、キセルを取り出してタバコに火を着けた。

突然ゴロゴロという雷の音と共に激しい雨が降ってきた。

笛吹き名人は急いで薪を柞の木の下へ運び込み、両手で耳を塞ぎ、木の下に身体を伏せて一心に念仏を唱えた。

この雷雨は、柞の大木を昼寝の寝床にしていた天狗の仕業。

昼寝を邪魔された腹いせに団扇を叩き雷を呼び付けて、雨を降らせたのだったが、そうとは知るよしもない笛吹き名人はじっと木の下に伏せていた。

いつしか空は晴れ上がり、付近は元の静けさを取り戻した。

そっと顔を上げた笛吹き名人は、今までの豪雨はまるで嘘のように青く澄んだ空を見上げ、こらぁおかしいぞ、早よう帰るとしようと立ち上がった。

すると、頭上の枝に何かがぶら下がっている。
長さ一尺二寸(約36cm)くらいの奇麗な二本の竹筒がゆらりゆらりと揺れていた。

不思議に思った笛吹き名人が柞の木に登り、竹筒を手にして中を覗くと、中には漆塗りの立派な笛が入っている。

天下一と評判の高い笛吹き名人は、今まで見たこともなか立派な笛、誰が置いて行ったとじゃろかと首を傾げながらも、笛を口に当てて、ぴーひゃら、ぴーひゃらら。

この世のものとは思えないほどの素晴らしい音色に、今までのことを忘れ薪拾いも止めてしまって吹き続けた。

美しい音色が谷間を流れていった。

夢中になって吹いていた名人も、周囲が薄暗くなったことに気付き、こらぁうっかりしとった。

早う帰らな道に迷うてしまうと笛を大事に腰に差し、薪を背負って家路についた。

家に辿り着いた笛吹き名人は、今日の出来事の一部始終を家族に話して聞かせた。

その頃、犬鳴の山奥では、命よりも大切な笛を亡くした天狗が、あちこちと笛を探し回っていた。

(つづく)
(参考)昭和60年11月1日発行「古賀町誌」(古賀町誌編さん委員会編集)

〔写真〕(2018年11月撮影)

清瀧橋から大根川の上流へ
前方の山を目指して
大根川を左に見たり、右に見たり

 

ようやく山道らしく

 

分かれ道。右へ行くと「薦野城」、左へ行くと「この先 行き止まり」。

 

物語の舞台の地はまだまだ先のようですが、ここから通行制限。
清瀧橋の近くにある「犬鳴山系西山(鮎坂山)周辺図」

 

「薦野の歴史をつなぐ会」発行の案内図
【記事を書いた人】
千鳥ヶ池のめだか 街歩きと歴史探訪の記事が得意。古賀の歴史を様々な視点から伝えています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください